「Copilotを導入したものの、資料作成や要約の支援にとどまり、業務の自動化まで進められない」「社内ドキュメントを十分に活用できていない」とお悩みのIT・DX担当者も多いのではないでしょうか。
そのような課題を解決する手段として注目されているのが、指示に応じて回答するだけではなく、自律的に業務を実行できる「Copilot AIエージェント」です。
本記事では、Copilot AIエージェントの仕組みや通常のCopilotとの違い、構築方法、部門別の活用例、導入前に確認したいポイントまで詳しく解説します。自社での活用方法を検討したい方は、ぜひ参考にしてください。
【この記事で分かること】
- Copilot AIエージェントは、設定した情報や機能を活用して、情報検索や業務処理を支援できる
- 通常のCopilotや従来型チャットボットとは、担う役割や対応できる業務の範囲が異なる
- 用途や利用規模に応じて、エージェントビルダーとCopilot Studioを使い分けることが重要である
- 導入時は小規模な業務から検証し、権限設定や料金・ライセンスなども事前に確認する必要がある
CopilotのAIエージェントとは?
Copilot AIエージェントは、Microsoft 365の情報や、設定したナレッジ・アクションを活用し、質問への回答や業務処理を支援するAIエージェントです。
設定された目的・指示・権限の範囲で必要な情報を参照し、対応するアクションを実行できます。情報検索だけではなく、外部サービスや業務システムと連携して処理を行える点も特徴です。
Copilot AIエージェントの仕組みを理解しやすくするため、本記事では「トリガー」「ナレッジ」「アクション」の3つの要素に分けて整理します。なお、これは製品の公式な固定構成を示すものではありません。
Copilot AIエージェントの仕組みを理解するための3つの基本要素
Copilot AIエージェントは、単にAIが回答を生成するだけではありません。「トリガー」「ナレッジ」「アクション」が連携することで、情報収集から業務の実行までを一連の流れとして処理します。
それぞれの役割は以下の通りです。
- トリガー:AIエージェントが処理を開始するきっかけです。チャットへの質問入力や他システムからの通知、特定イベントの検知などが該当します。
- ナレッジ:回答や業務処理の根拠となる情報源です。SharePoint OnlineやOneDriveのドキュメント、社内マニュアルなどを参照できます。
- アクション:AIエージェントが実際に実行する操作です。メール送信や資料検索、Outlookへの予定登録などを自動で行えます。
例えば、利用者がチャットで問い合わせると、それがトリガーとなります。その後、SharePoint Onlineの社内資料を参照して必要な情報を取得し、メール送信や予定登録などのアクションまで実行する流れです。
このように3つの要素が連携することで、Copilot AIエージェントは複数の業務を自律的に処理できるようになります。
通常のCopilotや従来のチャットボットとの違い
Copilot AIエージェントを理解するには、通常のCopilotや従来のチャットボットとの違いを把握することが大切です。それぞれ役割や得意とする業務が異なるため、自社の目的に応じて使い分ける必要があります。主な違いを以下の表にまとめました。
| 比較項目 | 通常のCopilot | Copilot AIエージェント | 従来型チャットボット |
| 主な役割 | 利用者の作業支援 | 特定目的の情報提供・業務処理の支援 | 定型的な問い合わせ対応 |
| 回答方法 | 利用者の指示に応じて生成 | 指示や設定したナレッジを基に生成 | シナリオやルールに沿って回答 |
| 業務処理 | 主に利用者の操作を支援 | 構成したアクションを実行できる | 限定的 |
| 向く用途 | 要約、文書作成、情報整理など | 社内問い合わせ、業務フロー、情報検索など | FAQ、定型案内など |
| 設計上の注意 | 出力内容を人が確認する | 権限・アクション・例外処理を設計する | シナリオの網羅性を確認する |
特にAIエージェントは、回答を生成するだけではなく、業務の実行まで担える点が特徴です。ここでは、通常のCopilotとチャットボットとの違いを順番に見ていきましょう。
通常のCopilotとの違い:業務の実行まで自律的に行う点
通常のCopilotは、利用者の作業を支援するアシスタントとして機能します。例えば、文章の要約やメールの下書き作成、会議内容の整理など、日常業務を効率化する用途が中心です。
一方、Copilot AIエージェントは、設定した目的やナレッジ、アクションに基づき、情報提供だけではなく業務処理まで支援できます。例えば、社内規程を参照して必要な情報を提示したり、構成したワークフローへ処理をつないだりする使い方が考えられます。
つまり、通常のCopilotが利用者の作業を支援するのに対し、AIエージェントは構成した範囲で情報提供や業務処理を支援するAIと整理できます。重要な判断や承認は、人が確認する運用を組み合わせることが大切です。
チャットボットとの違い:文脈を理解し柔軟に処理できる点
従来のチャットボットは、事前に設定したシナリオやルールに沿って回答する仕組みが一般的です。そのため、定型的な問い合わせには適していますが、想定外の質問や複雑な業務への対応には限界があります。
一方、Copilot AIエージェントは、LLM(大規模言語モデル)を活用して自然言語の文脈を理解します。利用者の意図を踏まえながら必要な情報を収集し、状況に応じた処理を実行できる点が特徴です。
例えば、チャットボットは休暇申請の方法を案内する役割を担います。一方、AIエージェントは申請内容を理解した上で、実際に申請システムへアクセスし、申請処理まで進めることが可能です。
このように、チャットボットが「回答するAI」であるのに対し、AIエージェントは「回答に加えて業務まで実行するAI」といえます。なお、チャットボットも定型的な問い合わせ対応では依然として有効であり、用途に応じた使い分けが求められます。
業務を効率化するCopilot AIエージェントの機能
Copilot AIエージェントには、業務効率化を支援するさまざまな機能が搭載されています。情報を探す作業だけではなく、業務の実行やナレッジ共有まで支援できることが特徴です。
ここでは、代表的な機能である「社内データの横断検索」「業務プロセスの自動化」「業務ナレッジの共有」について解説します。
社内データを横断検索して情報収集を高速化する機能
Copilot AIエージェントでは、設定したMicrosoft 365の情報やナレッジソースを基に、必要な情報を検索・整理できます。
例えば、SharePointなどに保存された社内資料をナレッジとして利用し、利用者からの質問に応じた回答を生成することが可能です。
ただし、参照できる情報は一律ではありません。対象データやナレッジの設定、ライセンス、管理設定、利用者のアクセス権限などによって異なります。
Microsoft 365の情報を利用するエージェントでは、原則として利用者がアクセス権を持たない情報は回答に利用されません。
承認申請などの業務プロセスを標準化・自動化する機能
Copilot AIエージェントは、情報検索だけではなく、複数の業務工程を自動化することも可能です。定型業務を標準化することで、担当者の負担軽減や業務品質の均一化につながります。
例えば、データ収集から資料作成、関係者への共有、承認依頼までのワークフローを自動で実行できます。AIエージェントが進捗状況を追跡するため、手続きの遅延や対応漏れを防ぎやすくなるでしょう。
具体的な活用例としては、以下が挙げられます。
- 定例報告資料の自動作成
- 稟議書の作成支援
- 承認申請の実行
- 申請完了後のTeamsへの自動通知
ただし、重要な意思決定や最終承認まで全てをAIへ任せられるわけではありません。人による確認と組み合わせながら運用することが重要です。
過去の対応履歴を活用した業務ナレッジの共有機能
企業では、担当者ごとの経験やノウハウが個人に蓄積され、属人化が課題になることがあります。Copilot AIエージェントは、過去の業務データや対応履歴を活用し、組織全体でナレッジを共有することを支援します。
例えば、カスタマーサポートの対応履歴や総務・人事への問い合わせ内容、営業担当者の引き継ぎ資料などを参照し、必要な情報を整理して提示することが可能です。
その結果、ベテラン社員の知見を組織全体で活用しやすくなります。新任担当者でも過去の対応を参考にしながら業務を進められるため、教育コストの削減や業務品質の維持にもつながるでしょう。
なお、AIが全てのノウハウを自動で整理するわけではありません。蓄積された業務データを活用し、ナレッジ共有を支援する仕組みとして活用することが大切です。
Copilot AIエージェントを導入するメリット
Copilot AIエージェントを活用すると、単純な作業時間の削減だけではなく、情報活用や業務プロセスの改善につなげられます。
主なメリットは以下の4つです。
情報探索にかかる時間を短縮しやすい
社内資料やナレッジをエージェントから参照できるようにすると、利用者が保存場所を一つずつ確認する負担を軽減できます。
必要な情報へアクセスしやすくなることで、資料検索や問い合わせにかかる工数の削減が期待できます。
業務手順を標準化しやすい
定型的な手順をアクションやワークフローとして設計することで、担当者による進め方の差を抑えやすくなります。
特に、複数の工程を決められた手順で処理する業務では、標準化を進める手段となります。
問い合わせ対応の属人化を抑えやすい
社内規程やFAQ、マニュアルなどをナレッジとして整備すると、特定の担当者だけが知っている情報を共有しやすくなります。
担当者への問い合わせ集中を防ぎ、組織内で必要な情報を利用しやすい環境づくりにつながります。
既存のMicrosoft 365環境を活用できる
Microsoft 365を利用している企業では、SharePointなど既存の情報資産をエージェントのナレッジとして活用できます。
新たな仕組みを全て一から整備するのではなく、既存環境を生かしながらAI活用を進められる点もメリットです。
部門別に見るCopilot AIエージェントの活用例
Copilot AIエージェントは、部門ごとの業務課題に合わせて設計できます。ここでは代表的な活用例を紹介します。
情報システム部門
情報システム部門では、社内ITに関する問い合わせ対応への活用が考えられます。
パスワード変更方法や社内システムの利用手順、端末設定などの情報をナレッジとして設定し、利用者が必要な情報を確認できる仕組みを構築できます。
人事・総務部門
人事・総務部門では、就業規則や各種申請方法、福利厚生制度などの問い合わせ対応に活用できます。
定型的な質問への回答を支援することで、担当者が個別対応に費やす時間を削減しやすくなります。
営業部門
営業部門では、商品資料や過去の提案資料、社内ナレッジの検索などへの活用が考えられます。
必要な情報の収集や提案準備を支援することで、営業担当者が顧客対応に時間を充てやすくなります。
カスタマーサポート部門
カスタマーサポートでは、マニュアルやFAQを参照しながら回答候補を提示する仕組みを構築できます。
問い合わせ内容に応じて必要な情報を探す負担を減らし、担当者による回答品質のばらつきを抑える効果も期待できます。
エージェントビルダーとCopilot Studioの違い・選び方
Copilot AIエージェントを構築する方法は1つではありません。用途や導入規模に応じて適切なプラットフォームを選ぶことが重要です。
主な構築方法には「エージェントビルダー」と「Copilot Studio」があります。それぞれ得意とする用途が異なるため、自社の目的を整理した上で選択しましょう。
| 比較項目 | エージェントビルダー | Copilot Studio |
| 想定用途 | 情報検索や小規模な業務支援 | 高度な業務処理や全社的な活用 |
| 利用者 | 個人・小規模チーム | 部門・全社・社外利用など |
| 構築の始めやすさ | 自然言語を使って始めやすい | より詳細な設計・設定が可能 |
| 連携・拡張 | Microsoft 365を中心とした利用 | 多様なデータソースやツールとの連携に対応 |
| 向くケース | 小規模な検証や社内利用 | 高度な連携や大規模展開を検討する場合 |
個人や小規模チームの社内利用に適した「エージェントビルダー」
エージェントビルダーは、小規模な業務改善やPoC(概念実証)を進めたい場合に適した構築ツールです。Microsoft 365環境内で利用できるため、現場主導でAI活用を始めやすいことが特徴です。
例えば、TeamsやMicrosoft 365内に保存されている資料を検索するAIエージェントや、社内問い合わせに対応するAIエージェントなどを作成できます。
また、プログラミングの専門知識がなくても、チャット形式で設定を進められるため、IT部門だけではなく現場担当者でも構築しやすいでしょう。
個人利用やプロジェクト単位など、限定された範囲でAI活用を検証したい場合に適しています。まずは小規模な業務から効果を確認し、その後に活用範囲を広げたい企業に向いているプラットフォームです。
外部公開や高度なシステム連携を検討する場合のCopilot Studio
全社展開や高度なシステム連携を前提とする場合は、Copilot Studioが有力な選択肢です。より柔軟な開発や管理機能を備えており、エンタープライズ環境での利用を想定しています。
Copilot Studioでは、独自のナレッジベースを構築できます。さらに、APIやコネクターを利用してPower Automateなどと連携し、高度な承認フローや業務プロセスを実装することも可能です。
また、社外向けWebサイトへの公開や基幹システムとの連携、複数部門を横断するAIエージェントの運用にも対応できます。全社規模で利用する場合に求められるガバナンス管理やアクセスコントロール機能も備えています。
一方で、高度なシステム連携には設計や設定が必要です。そのため、利用目的や運用体制を整理した上で導入を進めることが重要でしょう。
CopilotでAIエージェントを構築する具体的な手順
Copilot AIエージェントは、目的に応じた設定やナレッジの登録を行うことで構築できます。利用するプラットフォームによって操作方法は異なりますが、基本的な流れは共通しています。
また、構築後のテストや改善も重要です。ここでは、エージェントビルダーとCopilot Studioの構築手順、回答精度を高めるポイントを紹介します。
エージェントビルダーを使用した簡易作成の5ステップ
エージェントビルダーを利用する場合の一般的な流れは以下の通りです。
- Microsoft 365 Copilotのチャット画面から「エージェントの作成」を選択する
- 「説明」タブでエージェントの役割、目的、対象ユーザー、出力形式を設定する
- 「構成」タブで指示内容を調整し、SharePointなどのナレッジを追加する
- プレビュー画面で想定される質問を入力し、回答内容を確認する
- 共有先を指定して公開し、テストユーザーからフィードバックを収集する
テストでは、想定する質問に正しく答えられるかだけではなく、以下のようなケースも確認しましょう。
- 回答できない質問を入力した場合
- 利用者に権限がない情報を求めた場合
- 誤った情報や曖昧な指示を入力した場合
- アクションが正常に実行できなかった場合
正常系だけではなく例外時の挙動も確認することで、本番利用時のリスクを抑えやすくなります。
Copilot Studioを使用した本格構築の6ステップ
Copilot Studioは、全社利用や高度なシステム連携を前提としたAIエージェントを構築できるプラットフォームです。公開前の検証や継続的な更新も重要な工程となります。
一般的な構築手順は以下の通りです。
- Copilot Studioで新規エージェントの作成を開始する
- Instructionsへ役割、ルール、出力形式を設定する
- Knowledgeを追加し、インデックス処理が完了して「Ready」と表示されるまで待機する
- テスト機能で回答内容や参照元ソースを確認する
- Publishを実行し、Teamsなどのチャネルへ公開する
- 設定を変更した場合は再度Publishを実行し、最新の内容を反映する
Knowledgeの登録後は、インデックス処理が完了するまで待つ必要があります。また、本番環境へ公開する前には十分なテストを行い、期待通りの動作になっているかを確認しましょう。
挙動を安定させ回答精度を高めるプロンプトとナレッジのコツ
AIエージェントの品質は、プロンプトやナレッジの設計によって大きく左右されます。構築時には、回答内容だけではなく、回答してはいけない内容も明確に設定することが重要です。
例えば、役割や出力形式に加え、「回答できない内容」「参照してはいけない情報」などの禁止事項や回答制限をプロンプトへ設定すると、意図しない回答を抑えやすくなります。
また、初期段階から大量の資料を登録するのではなく、信頼できる少数のナレッジから始めることをおすすめします。段階的にナレッジを追加すると、回答精度の変化を確認しやすくなるためです。
公開範囲も最初は限定し、少人数でテストを行いましょう。ハルシネーション(AIが事実と異なる内容を生成する現象)や不要な情報の表示がないかを確認し、必要に応じてプロンプトやナレッジを改善していくことが、安定した運用につながります。
Copilot AIエージェントに関するよくある質問
ここからは、Copilot AIエージェントについてのよくある質問と回答を紹介します。
CopilotとAIエージェントの違いは?
通常のCopilotは、要約や文書作成など利用者の作業を支援する用途が中心です。AIエージェントは、構成したナレッジやアクションを利用して、特定目的の情報提供や業務処理まで支援できます。
エージェントビルダーとCopilot Studioはどちらを選ぶべき?
個人や小規模チームで手軽に始めたい場合はエージェントビルダー、高度なシステム連携や広い範囲への展開を検討する場合はCopilot Studioが候補となります。
プログラミングの知識は必要?
基本的なエージェントであれば、プログラミングの専門知識がなくても作成できます。ただし、高度なシステム連携や独自要件を実装する場合は、技術的な知識が必要になることがあります。
機密情報をナレッジとして利用しても大丈夫?
利用するサービスの仕様や組織のセキュリティポリシーを確認した上で判断する必要があります。アクセス権限や共有範囲を適切に設定し、公開前に権限外の情報が表示されないかを確認しましょう。
AIエージェントの誤回答を防ぐには?
指示を明確にし、信頼できるナレッジを設定することが基本です。また、回答できないケースや権限外の質問も含めてテストし、公開後も継続的に改善します。
どのような業務から始めるとよい?
社内FAQやマニュアル検索など、対象範囲が明確で効果を確認しやすい業務から始めるとよいでしょう。最初から全社的な業務を対象とせず、小規模に検証する方法があります。
料金はどこで確認できる?
Microsoft 365 CopilotやCopilot Studioの料金・ライセンス情報は変更される可能性があります。Microsoft公式のライセンスガイドやCopilot Creditsに関する最新情報を確認してください。
まとめ
Copilot AIエージェントは、社内データを活用した情報検索や業務ワークフローの自動化を実現し、企業の生産性向上に貢献できるAIです。導入時は、エージェントビルダーとCopilot Studioの特徴を理解し、自社の利用目的や運用規模に合ったプラットフォームを選択することが重要です。
またライセンス体系や登録できるデータ量、アクセス権限、Copilotクレジットによる課金などの仕様も事前に確認する必要があります。まずはPoCから始め、効果を検証しながら運用範囲を広げることをおすすめします。
TDSE株式会社では、Copilotを活用したAIエージェント開発やRAG構築、マルチモデル環境の構築まで幅広く支援しています。Copilotを含めたAI活用や業務自動化をご検討中の方は、資料請求や無料デモ、お問い合わせをご活用ください。自社に適したAI導入の方法をご提案いたします。
山本 豊
Difyライセンス・支援サービスの営業責任者。
連絡先:agent@tdse.jp
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