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- 投稿日
- 2024.09.27
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- 更新日
- 2024.09.27
現代ではさまざまな企業でAIが導入されています。
AIと一言で言ってもさまざまな種類があり、その中の一つとして生成AIが挙げられます。
生成AIを導入することで業務の効率化やコスト削減などのメリットにつながるものの、デメリットも存在しているため事前に把握しておきましょう。
本記事では生成AIの種類・仕組みといった概要や、導入のメリット・デメリット、導入時の注意点などを解説します。
企業にて生成AIの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
- 1 生成AIはさまざまなコンテンツを独自に生成できるAI
- 2 生成AIと従来のAIの違い
- 3 生成AIが注目されている背景
- 4 ChatGPTから見る生成AIの歴史
- 5 生成AIでできること・できないこと
- 6 生成AIに用いられている4種類の技術
- 7 ビジネスシーンで生成AIを活用できる場面
- 8 生成AIを活用した企業事例
- 9 生成AIを導入する流れ
- 10 生成AIを選ぶ際の4つのポイント
- 11 生成AIを導入するメリット
- 12 生成AIを導入するデメリット
- 13 生成AI導入で発生するリスクへの対策
- 14 失敗例から学ぶ生成AI導入を成功させるポイント
- 15 生成AIの将来と今後の課題
- 16 生成AIの概要やメリット・デメリットを把握して適切な運用につなげよう
生成AIはさまざまなコンテンツを独自に生成できるAI
生成AIは機械学習の結果から新たなコンテンツを自動で生み出せるAIのことで、ジェネレーティブAI、生成系AIとも呼ばれています。
生成AIを用いると、独自のコンテンツをテキストや動画、音声などさまざまな形式で生成できます。
生成AIと従来のAIの違い
生成AIが登場する以前からAIは存在していました。
このような従来のAIと生成AIとの違いは、オリジナルのコンテンツを作れるかどうかです。
例えばユーザーが質問をした場合、従来のAIは過去に学習した既存のコンテンツの中から適切な回答を提案します。
一方で生成AIは過去の学習内容に加えてディープラーニング(深層学習)と呼ばれる技術を生かし、新たなコンテンツを生み出して提案できます。
ディープラーニングとは機械学習の一種
生成AIで用いられるディープラーニングとは、機械学習の一種です。
機械学習は大量のデータをコンピューターに教え込み、そのルールやパターンを認識させる手法です。
機械学習の中でもディープラーニングは、人の脳を基にした数学的モデルであるニューラルネットワークを複数重ねることで複雑なパターン認識、予測を可能にしています。
生成AIが注目されている背景
生成AIが注目されている背景の一つとして、無料生成AIであるChatGPTがリリースされた点が挙げられます。
無料のサービスがリリースされたことで、ユーザーはAIを身近に感じるようになりました。
また生産性の向上が求められるようになってきたことも、生成AIが注目される理由として挙げられるでしょう。
日本は少子高齢化によって働き手が減少傾向にあります。
そのため生成AIによってオリジナルコンテンツを生成すると、人手不足の解消を目指すことが可能です。
このような背景から生成AIのニーズは高まっており、一般社団法人 電子情報技術産業協会の発表によれば、2030年には日本の生成AI市場の需要額は1兆7,774億円 にまで達すると予想されています(※)。
※参考:一般社団法人 電子情報技術産業協会.「JEITA、生成 AI 市場の世界需要額見通しを発表」.https://www.jeita.or.jp/japanese/topics/2023/1221-2.pdf ,(参照2024-09-03).
ChatGPTから見る生成AIの歴史
前述の通り生成AIが注目された一つの要因は、OpenAI社が提供するChatGPTです。
ここではChatGPTを通じて生成AIの歴史を解説します。
ChatGPT登場以前
現代の生成AIにつながる回帰型ニューラルネットワークが誕生したのが、1980年代〜90年代です。
当時はまだChatGPTも登場していませんでした。
回帰型ニューラルネットワークは連続的な情報を利用できる仕組みで、現代でも機械学習の一つであるディープラーニングを支える技術です。
その後、1997年には回帰型ニューラルネットワークに改良を加えた、LSTM(Long Short – Term Memory)ネットワークモデルが登場します。
LSTMネットワークモデルが登場したことで、過去の入力データを長期間保持できるようになりました。
2017年のトランスフォーマーモデルが登場
2017年にはChatGPTにも役立てられている、ニューラルネットワークの一種の、トランスフォーマーモデルが登場しています。
トランスフォーマーモデルは、単語が前後の文脈によって意味が異なることを追跡し、適切に判断する仕組みです。
トランスフォーマーモデルが登場したことで、より長い文章を分析して適切な判断ができるようになりました。
ChatGPTが登場した2018年~2019年
対話形式のサービスであるChatGPTが最初に登場したのは2018年です。
当時は最初のモデルであるGPTが登場し、さらに数カ月後の2019年にはGPT-2が登場しました。
GPT、GPT-2は後に登場するGPT-3.5と異なり、生成した文章のクオリティや多様性に限りがありました。
2020年にGPT-3が登場
2020年になるとChatGPT-3が登場します。
ChatGPT-3は当時最大規模の言語モデルを誇っていたため、さまざまな言語で優れたパフォーマンスを発揮しました。
具体的には英語や日本語、フランス語などさまざまな言語で文書要約や質問回答などに対応していました。
しかしChatGPT-3がもたらしたのはメリットだけではありません。
ChatGPT-3はインターネットにある偽情報や、倫理的に問題のある情報なども取り込んでしまうというデメリットもありました。
ChatGPT-3の登場以降、OpenAI社以外の企業、組織も大規模な言語モデルの開発・公開を始めました。
2022年にChatGPTが広く知られるきっかけとなったGPT-3.5が登場
2022年にはGPT-3.5が登場し、GPT-3.5を導入したChatGPTが公開されます。
ChatGPT-3.5は人間による強化学習に対応しているため、ユーザーが利用を続けることでより精度の高いコミュニケーションが期待できます。
スムーズなコミュニケーションが図れるようになったChatGPT-3.5は、大きな反響を呼びました。
2023年にGPT-4が登場
大きな反響を呼んだChatGPT-3.5に続き、2023年にはChatGPT-4が登場しました。
ChatGPT-4が登場したことによって、複雑なタスクや専門的な質問にも対応できるようになっています。
例えば、法律や数学などの専門的な分野も論理的に回答可能です。
またChatGPT-4ではテキストだけでなく画像の入力も可能になりました。
そして2023年にはOpenAI社がChatGPTのAPIを公開しました。
これにより、さまざまな企業がChatGPTの技術を活用した新たなサービスの提供や、ChatGPTの独自のカスタマイズができるようになっています。
生成AIでできること・できないこと
生成AIの導入に当たっては、生成AIではどのようなことができて、どのようなことができないのかを確認しておきましょう。
ここでは生成AIでできること、できないことを解説していきます。
生成AIでできること
生成AIでできることとして以下が挙げられます。
- テキスト生成
- 画像生成
- 動画生成
- 音声生成
- ソースコードの生成
テキスト生成
生成AIであれば自動でテキストの生成が可能です。
例えばユーザーからの質問に対して生成AIが適切な回答を考え、オリジナルコンテンツとして提案します。
また、文章の翻訳や要約、添削も生成AIで対応可能です。
画像生成
生成AIを活用することで画像の生成が可能です。
生成AIには、過去に学習したロゴやデータのパターンが豊富に蓄積されています。
蓄積されたデータ、パターンをベースに、ユーザーが指定したテキストに応じた画像を数秒で生成します。
動画生成
画像生成の技術を発展させたのが動画生成です。
画像生成と同様に、ユーザーが入力したテキストに応じた動画を生成AIが生成してくれます。
また動画生成はゼロから動画を生成するだけではなく、既存の動画の編集にも対応しています。
音声生成
コンピューターに音声データを入力することで、新たなに音声データを生成可能です。
音声生成では特定の人の大量のデータを学習させることで、ベースとなった人の声色に似せた音声を生成できます。
ソースコードの生成
生成AIはプログラミングに必要なソースコードの生成も可能です。
生成AIであればプログラミングの知識に自信がない人であっても、一定以上のクオリティのソースコードを書けます。
また生成AIを用いることで、大量のソースコードも生成可能です。
生成AIでできないこと
前述の通り、生成AIによってテキスト生成、画像生成などさまざまな作業が自動化されます。
しかし生成AIを導入したからといって、全ての作業を自動化できるわけではありません。
ここでは、生成AIではできないことを解説します。
- 感情の理解や表現
- パーソナライズ化した質問
感情の理解や表現
生成AIは人間のように感情を理解したり、表現したりすることが苦手です。
例えば人間であれば、相手から言われた言葉をそのまま受け取らず、相手の意図や感情を読み取ろうとするケースがあります。
一方、生成AIは感情を読み取らずに文章をそのままの意味で読み取ってしまいます。
生成AIの技術は日々進歩しているため、従来よりもスムーズなコミュニケーションが可能になっているものの、いまだに生成AIは感情の理解や表現が苦手な傾向にあるでしょう。
同様に生成AIは人間のような抽象的な概念の判断は得意としていません。
パーソナライズ化した質問
パーソナライズ化した質問に対しても生成AIは対応しきれません。
生成AIは学習したデータに基づき生成する、会社全体向けのFAQのようなコンテンツには適しています。
しかし一人ひとりに合わせたオリジナルコンテンツの提供には適していません。
また生成AIは学習した範囲しか対応できません。
生成AIの学習範囲外の情報をユーザーが求めたとしても、対応は難しいでしょう。
そのためパーソナライズ化した質問が寄せられる場面での使用には適していません。
生成AIに用いられている4種類の技術
生成AIには次のような技術が用いられています。
- GPT
- VAE
- GAN
- 拡散モデル
それぞれの技術について解説します。
ChatGPTに代表されるGPTは自然な文章を生成するための技術
前述したChatGPTに用いられているGPTは、Generative Pre-trained Transformerの略で、自然な文章をAIによって生成するための技術です。
GPTはOpenAI社が開発した生成AIです。
GPTであれば、大量のデータを事前に学習させることで、精度の高い文章を生成できます。
VAEは画像生成モデルの一種
VAEはVariational Auto-Encoder(変分自己符号化器)の略で、画像生成やイラスト生成に用いられている技術です。
VAEの技術を用いることで、入力された画像のデータの特集を学習して、元の画像の特徴を踏襲した画像を生成できます。
GANは2つのニューラルネットワークから成る
GANはGenerative Adversarial Networksの略で、VAEと同じく画像生成モデルです。
GANはVAEと異なり、画像を生成するジェネレーターと画像を識別するディスクリミネーターの、2つのニューラルネットワークから成ります。
ジェネレーターが偽物の画像を生成し、ディスクリミネーターが画像を本物かどうか判断します。
ジェネレーター、ディスクリミネーターの2つによって生成、真贋の判断を繰り返すことで、徐々にユーザーが求める画像を生成可能です。
拡散モデルはノイズを調整する画像生成モデル
拡散モデル(Diffusion Model)は元の画像にノイズを加えたり、除去したりすることで画像を生成する技術です。
拡散モデルのうち、元の画像にノイズを加える仕組みはForward Processと呼ばれます。
一方、元の画像のノイズを除去することで画像を生成するのがReverse Processです。
ビジネスシーンで生成AIを活用できる場面
生成AIを導入することで、自動でテキスト生成や画像生成などが可能です。
ここでは次のようなビジネスシーンで生成AIを活用できる場面を解説します。
- 会議議事録の生成
- 市場分析
- サイトのデザイン生成
- プログラミングコードの生成や従業員教育
会議議事録の生成
ビジネスシーンで生成AIを活用することで、会議議事録の生成が可能です。
例えば入力された音声を自動で文字起こしして、テキストとして生成してくれます。
また生成AIで会議の議事録を生成すれば、取り掛かるべきタスクや必要事項を抽出することもできます。
生成AIを活用することで議事録作りにかかる時間を削減し、本来の業務へ注力できるでしょう。
市場分析
生成AIは市場や顧客の分析にも活用できます。
市場や顧客の分析には、多くの情報の収集と分析が必要です。
自社の従業員が膨大な情報を分析していると、時間とコストがかかってしまいます。
一方、生成AIを活用することで市場や顧客情報の収集、分析にかかる時間を削減可能です。
サイトのデザイン生成
サイトのデザイン制作にも生成AIは活用されます。
サイトのデザインは、自社のWebデザイナーや外注先に依頼して制作するのが一般的です。
そこで生成AIを活用すれば専門的な知識がなくとも、簡単にサイトのデザイン制作が可能です。
従来よりもコストや納期を削減したサイトをデザイン制作できます。
プログラミングコードの生成や従業員教育
ソフトウェア開発などに取り組んでいる企業の場合、生成AIを用いることでプログラミングコードの生成が可能です。
生成AIに対して、希望するプログラミングコードを自然言語で入力することで、適したコードを提案してくれます。
また自社で用意したプログラミングコードを生成AIサービスに入力することで、間違いやエラー、バグなどのチェックが可能です。
そのため従業員に対するプログラミングコードの教育にも、生成AIを活用できるでしょう。
生成AIを活用した企業事例
生成AIは、ビジネスにおけるさまざまな場面で活用可能です。
ここでは、生成AIを活用した企業の事例を解説します。
- チャットボットによる問い合わせ対応
- 画像診断による医療サポート
- 建築現場における異常の検知
- 文書作成業務の効率化
- 法令の検索
- アイデア出し
- 生徒に応じた学習アドバイスを提供
- AIタレントを使った広告
チャットボットによる問い合わせ対応
生成AIの機能を備えたチャットボットによって、問い合わせ業務を自動化した航空会社があります。
チャットボットを導入したことで、顧客は24時間365日、問い合わせができるようになりました。
さらに同企業が導入したチャットボットは日本語だけでなく、外国語にも対応可能できるため、国内便だけでなく国際便ユーザーにも対応可能です。
同社ではチャットボットによる問い合わせ対応がスタートして2年で、回答可能範囲が約90% にまで向上したようです。
画像診断による医療サポート
医療現場でも生成AIの活用が可能です。
医療現場で活用される生成AIには、例えば患者のMRI画像を生成AIが分析することでがんを判断するシステムや、会話データの分析による認知症やうつ病判断補助システムが挙げられます。
医療現場でサポートに生成AIを活用することで、人手不足解消や人では発見が難しいわずかな変化にも気付きやすくなります。
建築現場における異常の検知
生成AIを用いることで、建築現場における異常を検知可能です。
例えばドローンで入手した赤外線データを分析することで、外壁タイルの状態を判断できるシステムがあります。
また、建設機械と作業員との接触を防ぐシステムにも生成AIが用いられています。
建設業では2024年4月 から時間外労働に上限が設けられました(※)。
そのため生成AIなどを活用し、効率的に作業を進めることが重要です。
※参考:厚生労働省.「2024年4月から 建設業 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」.https://www.mhlw.go.jp/content/001116624.pdf ,(参照2024-09-03).
文書作成業務の効率化
生成AIによって文書作成業務を効率化している大手銀行もあります。
同行は文書作成業務の効率化のために、独自の生成AIを開発しました。
独自の生成AIを活用することで、規程やマニュアルなど行内の業務の自動化を実現しています。
文書作成業務を効率化することで、従業員の作業時間の削減 を目指しています。
法令の検索
生成AIに情報を集約し、情報検索として活用している企業もあります。
例えば、製薬業界の場合、該当する法令や省令を自力で検索するには時間がかかってしまっていました。
そこで生成AIに関連する法律や省令情報を集めることで、従業員はスムーズに必要な情報にアクセスできます。
アイデア出し
アイデア出しのために生成AIを活用している事例もあります。
独自のチャットサービスに生成AI機能を付けることで、従業員は手軽に多くのアイデア出しができ、業務の効率化につながります。
生徒に応じた学習アドバイスを提供
生成AIは子どもの学習アドバイスにも活用可能です。
教育サービスを展開する企業の中には、生成AIによって生徒一人ひとりの学習履歴や、理解度に応じたアドバイスを提供している企業もあります。
生徒に合わせたサービスを構築することで、学習意欲の向上にもつながります。
AIタレントを使った広告
生成AIを使うことでAIタレントの生成が可能です。
AIタレントであればいつでも稼働できる上に、コストを抑えられます。
さらに日本語だけでなく多言語に対応できる、不祥事のリスクがないなどのメリットがあります。
通常のタレントを起用した場合、不祥事が発生すると広告差し替えに多額の費用が発生しかねません。
AIタレントであれば差し替えの必要がなく、広告を出し続けられます。
生成AIを導入する流れ
生成AIの導入は以下のような流れで進んでいくのが一般的です。
- 自社に適した生成AIの選定
- 利用する環境の構築
- 試験運用
- 運用
それぞれのステップについて詳しく解説します。
自社に適した生成AIの選定
最初に自社に適した生成AIを選定しましょう。
そのためには自社が抱えている課題を洗い出すことが大切です。
生成AIによって解決可能な課題として、以下が挙げられます。
- 社内業務の効率化
- 人件費削減
- 独自のコンテンツ制作
上記以外にも生成AIを導入する目的は存在するため、自社の課題を明らかにして適した生成AIを選定しましょう。
利用する環境の構築
導入する生成AIを選定したら、利用環境の構築に取り掛かります。
社内のルールやシステムの整備もその一つです。
セキュリティリスクへの対応策をはじめとした運用ルールを定めましょう。
また利用環境の構築と同様に、生成AI活用に当たり必要となる情報も収集しておくこともポイントです。
どのようなデータが必要になるのかを把握して、データの整理や収集を進めていきます。
試験運用
生成AIを導入しても、すぐに運用を開始できるわけではありません。
PoC(Proof of Concept)と呼ばれる試験運用を経て、本格的に運用開始するのが一般的です。
PoCでは生成AIの専門家だけでなく、自社のビジネスに精通した担当者も参加し、生成AIを活用した際の影響を検証し、本格的な運用に生かします。
運用
試験運用を経たら、本格的な運用がスタートします。
生成AIを運用する上では、業務に活用するだけでなく、改善点がないかを検証することも大切です。
生成AI導入による成果や改善点をモニタリングして、必要によっては生成AIの再学習に取り組みましょう。
生成AIが持つ情報が古くなると、利便性が低下してしまうので、定期的に情報のアップデートを行います。
生成AIを選ぶ際の4つのポイント
生成AIを選ぶ上では、自社の課題を解決できるかに加えて、次のようなポイントを意識しましょう。
- 国産か外国産か
- 料金体系は自社に合っているか
- スムーズに使えるか
- サポート体制が整っているか
国産か外国産か
生成AIは国内外問わず、さまざまなベンダーが提供しています。
導入に当たっては国産か外国産かを確認しましょう。
外国産の生成AIは新たな技術を取り入れている一方、サポート体制も含めて日本語に対応していない傾向にあります。
そのため日本で使用した場合、不自然な日本語になりかねません。
国産の生成AIであれば日本語に対応しているため、比較的使用しやすいでしょう。
料金体系が自社に合っているか
生成AI導入に当たっては、導入コストが発生するのが一般的です。
生成AI導入にかかるコストはベンダーによって異なるものの、初期費用だけでなく月額費用が発生する傾向にあります。
中には無料で利用可能な生成AIもありますが、使用できる機能は限定的です。
ベンダーにより備わる機能はさまざまですが、多機能の生成AIを導入したからといって、自社の目的が達成できるとは限りません。
生成AIを選ぶときは、自社で必要な機能が備わっているかどうかを確認するとともに、コストパフォーマンスに優れているかどうかもチェックしましょう。
スムーズに使えるか
生成AIを導入しても使いにくいと、従業員やユーザーの利用につながりません。
そのため導入する生成AIがスムーズに使えるかどうかを確認しましょう。
操作に手間がかかる生成AIでは導入してから運用開始まで、トレーニングやサポートが必要になる可能性があります。
操作性を確認するなら、トライアル期間を設けた生成AIがおすすめです。
トライアル期間が設けられた生成AIであれば、その間に操作性などを確認できます。
サポート体制が整っているか
ベンダーのサポート体制が整っているかどうかも、生成AI選びの大切なポイントです。
生成AIの導入に当たってはさまざまな疑問点が発生するでしょう。
そのため、自社が生成AIを導入するに当たっての疑問点を解決してくれる、サポート体制が整っているかを確認しましょう。
サポート内容はベンダーによって異なります。
例えば操作方法だけでなく、導入後のフォローアップなどを提供しているベンダーもあります。
生成AIを導入するメリット
生成AIを導入することで得られるメリットは次の通りです。
- 業務の効率化
- コスト削減
- 人員不足解消
- 新たなアイデアの発案
- 顧客満足度の向上
それぞれのメリットを解説します。
業務の効率化
生成AIを導入することで業務の効率化が期待できます。
例えば単純作業や繰り返しの作業はミスの発生確率を高める上、従業員のモチベーション低下も招きます。
このような単純作業、繰り返し作業によるミス、モチベーション低下などは生成AIによって解消可能です。
生成AIによって単純作業を自動化させれば、業務の効率化につながるでしょう。
作業時間がかかりがちな動画制作や文字起こしなどの業務も、生成AIを活用すれば効率的に行えます。
コスト削減
コスト削減も生成AI導入のメリットです。
生成AIによって単純作業やテキスト生成などの作業を自動化させることで、従来発生していた人件費を削減可能です。
生成AIによって削減できた人件費は、他のプロジェクトやシステム導入などの費用として活用できます。
また生成AIは操作性に優れる物が多いため、導入時の従業員への教育コストも削減できるでしょう。
人員不足解消
厚生労働省の発表によれば、日本の人口は今後減少していく傾向にあります。
特に生産年齢人口である15~64歳の減少は顕著です。2020年は7,509万人だったのが、2070年には4,535万人までに減少すると予想 されています(※)。
このように働き手の減少に対して、生成AIの活用が有効です。
生成AIを活用することで少ない人員であってもコンテンツ制作などの業務を進められるため、人員不足の解消につながります。
生成AIによって人員不足を解消することで、従業員に生じる負担も軽減可能です。
その結果、従業員満足度向上も期待できるでしょう。
※参考:厚生労働省.「人口減少社会への対応と人手不足の下での企業の人材確保に向けて~人材不足解消のカギは仕事と子育ての両立支援!~」.“我が国は今後本格的な人口減少社会に突入!”.https://www.mhlw.go.jp/content/001182285.pdf ,(参照2024-09-03).
新たなアイデアの発案
生成AIを導入することで、新たなアイデアの発案につながります。
例えばクリエイティブなコンテンツを制作しようとした場合、従業員だけでは新しい斬新なアイデアが思い浮かばないかもしれません。
一方、生成AIによって画像や音声、テキストを生成することで、新たなアイデアの発案につながります。
顧客満足度の向上
生成AIは、顧客満足度の向上にも有効です。例えば生成AIを使えば、顧客サポートを24時間提供できます。
従来の顧客サポートでは企業の営業時間にのみにしか問い合わせできませんでした。
しかし生成AIによって24時間のサポートを提供することで、顧客は待ち時間なく自分のタイミングで問い合わせが可能です。
生成AIを導入するデメリット
生成AIを導入することで懸念されるデメリットは次の通りです。
- 誤情報を含むコンテンツを生成しかねない
- 著作権を侵害する恐れがある
- 生成したコンテンツのクオリティが安定しにくい
- 情報漏えいのリスクがある
- 倫理的な問題を含むコンテンツを生成する恐れがある
- 情報が古くなる可能性がある
- 生成AIを悪用される可能性がある
誤情報を含むコンテンツや著作権侵害はさまざまなトラブルにつながるため、事前に把握しておきましょう。
誤情報を含むコンテンツを生成しかねない
生成AIはさまざまなコンテンツを自動で生成可能です。
しかし、生成AIが生成したコンテンツは全て真実だとは限りません。
誤情報を含むコンテンツを生成する恐れがあります。
このように、生成AIが誤った情報を生成してしまう現象をハルシネーションと呼びます。
生成AIが誤情報を含むコンテンツを生成してしまう理由は、学習段階の情報に影響されるためです。
生成AIは誤った情報か正しい情報なのかの判断が苦手です。
そのため誤った情報をそのまま学習してしまうと、生成するコンテンツにも誤情報が含まれることがあります。
生成AIが誤情報を含むコンテンツを生成してしまった場合、ユーザーが情報の正誤を判断するのは難しいでしょう。
著作権を侵害する恐れがある
生成AIで生成したコンテンツは、著作権を侵害する恐れがあります。
生成AIでコンテンツを生成するためには、事前の学習が必要です。
この学習データや内容によっては、既存コンテンツにかなり似通ったコンテンツを生成する恐れがあります。
特に生成AIによって生成したコンテンツを商用利用する場合、オリジナルのコンテンツの著作者から指摘される可能性があるでしょう。
生成AIの著作権は、生成AIの開発・学習段階と、生成AIでのコンテンツ生成段階とで分けて考えます。
学習データとして使用する際は著作物の利用が可能です。
しかし過度な利用や著作権者の利益を害するような利用は認められていません。
一方、コンテンツ生成における著作権は通常の著作権侵害と同様に判断されます。
つまり、私的に使用するために、文章や画像などを生成することは可能です。
しかし、私的利用と見なされない場合、著作権者から損害賠償請求や差止請求がされる可能性があります。
企業の場合、オフィス内で使用するだけでなく、社内報やプレゼンテーション資料としても生成AIのコンテンツを使用するケースもあります。
社内報とプレゼンテーション資料は、どちらも私的利用とは見なされない可能性があるでしょう。
企業が著作権問題に関わるようなコンテンツを制作、発表してしまうと企業倫理を疑われかねません。
そのため、著作権侵害に当たるようなコンテンツの制作、発表は避けましょう。
生成したコンテンツのクオリティが安定しにくい
生成AIはさまざまなコンテンツを生成できるものの、クオリティが安定しにくい傾向にあります。
生成AIはユーザーからの指示に対してランダムに回答を提案します。
また、同じ質問をした場合であっても回答が異なる可能性があるでしょう。
そのため、納得できるクオリティのコンテンツが生成されない場合は、繰り返し質問をして、適宜従業員が修正を加えていく必要があります。
情報漏えいのリスクがある
生成AIは、学習した情報をベースにさまざまなコンテンツを生成します。
生成AIに学習させる情報に個人情報や企業の重要な情報が含まれていると、コンテンツに反映され、情報漏えいのリスクが生じるでしょう。
また、自社で開発しているソフトウェアのコードを生成AIに学習させたことで、情報が漏えいする恐れもあります。
生成AIによって情報が漏えいしてしまう原因は学習だけではありません。
不正アクセスや技術的なバグによっても、情報が漏えいする可能性があります。
生成AIに入力された情報の保存先はクラウドです。
そのため悪意あるユーザーの不正アクセスによって情報が漏えいする恐れがあります。
さらに生成AIの技術的なバグが発生すると、意図せず情報が漏えいしかねません。
情報の取り扱いには注意しましょう。
倫理的な問題を含むコンテンツを生成する恐れがある
生成AIが提供するコンテンツの中には、倫理的な問題が含まれている可能性があります。
そのため例えば偏見や差別、名誉棄損など不適切な情報を含むコンテンツを生成してしまうかもしれません。
このように倫理的な問題を含むコンテンツを生成してしまうのは、学習している情報が少ない、情報に偏りがあるといった原因が考えられます。
情報が古くなる可能性がある
生成AIが提供するコンテンツは情報が古い可能性があります。
生成AIは学習データをベースにコンテンツを提供するため、最新情報を常に更新しなければ情報は古くなってしまうでしょう。
例えば税金について質問するとき、税制改正で更新された情報を学習していない生成AIを使用した場合、情報の精度が低くなるでしょう。
生成AIを悪用される可能性がある
生成AIはビジネスシーンで活用されるだけではなく、悪用される可能性もあります。
先述の通り、生成AIを活用するとプログラミングコードの生成が可能です。
そのため悪意あるユーザーがマルウェアの生成方法を生成AIから手に入れて、悪用する可能性があるでしょう。
具体的には、生成AIを使うことで、知識がなくともマルウェアを生成できるため、企業や個人を狙った不正アクセスなどの発生リスクが高まります。
生成AI導入で発生するリスクへの対策
生成AI導入で生じる誤情報生成、著作権侵害などのリスクへは次のような対策を講じましょう。
- 運用ルールを策定する
- 生成AIを使用する従業員のリテラシーを高める
- 生成AIにセキュリティ対策を講じる
運用ルールを策定する
生成AIを導入する際はどのように運用していくのか、ルールを策定しましょう。
著作権侵害や誹謗中傷に当たるコンテンツを回避するためのルール、利用できる部門を限定するルールなど、リスクを回避するための指針を策定することが大切です。
また生成AI導入のルールだけでなく、必要に応じてインターネット上における自社の風評を監視できるツールの導入も効果的です。
風評監視やモニタリングツールを活用することで、炎上トラブルなどを早期に発見できるため、リスク拡大前に沈静化を図れます。
生成AIを使用する従業員のリテラシーを高める
生成AIによるリスクを抑えるためには、実際に使用する従業員のセキュリティリテラシーを高めることも重要です。
生成AIに潜むリスクを伝えるだけでなく、セキュリティルールの策定やeラーニングの活用、社内での集合研修、理解度チェックなどを実施してみましょう。
生成AIに伴い従業員のセキュリティリテラシー向上を目指すのであれば、役職や雇用形態にかかわらず実施することが大切です。
役職者やアルバイトであっても、生成AIを使用する全ての従業員のリテラシーを高めましょう。
生成AIにセキュリティ対策を講じる
生成AIへの不正なアクセスなどを防ぐためには、セキュリティソフトウェアのアップデートが効果的です。
アップデートをせずにいると、新たな攻撃方法によって不正アクセスの標的となる恐れがあります。
セキュリティ情報は常に変化しているため、ソフトウェアのアップデートに加えて、担当者による情報収集も欠かせません。
生成AIのセキュリティ対策は選定段階からも始まっています。
データの暗号化やアクセス制御などのセキュリティ機能が備わっているかどうか、実績がある生成AIかどうかなどに着目しましょう。
失敗例から学ぶ生成AI導入を成功させるポイント
生成AIを導入しても思ったような効果が得られないケースがあります。
そのため、事前に導入失敗例を把握して、効果の最大化につなげましょう。
ここでは次のような生成AI導入の失敗例と対策を解説します。
- 生成AI導入そのものが目的になってしまっている
- 現場の意見が反映できていない
- 学習データに不備がある
- 導入後の改善に取り組んでいない
- 生成AIに頼りきっている
生成AI導入そのものが目的になってしまっている
生成AI導入に失敗する事例として、導入そのものを目的化してしまう点が挙げられます。
「競合をはじめとした他社で生成AIを導入しているから」といった理由だけで生成AIを導入すると、導入後に活用しきれないかもしれません。
生成AI導入そのものを目的にするのではなく、どのような課題を解決できるのかを判断した上で導入しましょう。
現場の意見が反映できていない
生成AIを実際に使用する現場の意見が反映できていないと、導入後に定着しない可能性があります。
操作性はもちろん、機能や精度が不十分な場合、実際に生成AIを使用する従業員の不信感が高まりかねません。
生成AIを定着させるためにも、現場からのフィードバックを反映させることが大切です。
学習データに不備がある
生成AIの効果を引き出すためには、十分なデータを学習させる必要があります。
学習させるデータが少ないと、生成AIが提案するコンテンツに偏りが生まれてしまいます。
精度の高いコンテンツを提供できなければ、生成AIはなかなか定着しません。
十分な学習データを収集した上で、生成AIの運用につなげましょう。
導入後の改善に取り組んでいない
生成AIは導入後に定期的な改善が必要です。
生成AIを導入したものの、定期的な改善に取り組んでいないとコンテンツの精度が低下してしまいます。
導入後も高い精度を実現するためには成果指標(KPI)を設定し、導入効果を定量的に把握して改善につなげましょう。
生成AIを過信してしまう
業務を大幅に効率化できるからといって、生成AIを過信すると導入後の失敗を招きます。
また生成AIを過信すると、従業員の創造性の低下やスキルアップの機会損失などにつながってしまいます。
従って生成AIを導入する上では、何ができるのか、何ができないのかをよく把握しておきましょう。
生成AIの将来と今後の課題
生成AIはすでにさまざまな業種や分野で活用されています。
今後は生成AIがより進歩し、活用される場面がより増加していくでしょう。
例えば、テキスト生成や画像生成、音声生成といった異なるデータを統合して幅広い分野で活用できる、マルチモーダルAIが登場する可能性があります。
また人の感情を理解できるエモーショナルインテリジェンスを含んだ生成AIが登場すれば、より活用の幅が広がるでしょう。
このような生成AIのさらなる発展に伴い、次のような点が今後の課題として挙げられます。
- 人との協業の可能性
- 法整備と倫理的利用法の確立
人との協業の可能性
生成AIの技術力が向上すると、人の仕事や雇用に影響を及ぼすと考えられています。
しかし先述の通り、生成AIは万能ではありません。
そのためビジネスシーンであれば、人と生成AIそれぞれの特徴を生かして業務に取り組むことが大切です。
例えば生成AIは多くの問題を解決できるものの、複合的な問題への対応が苦手な傾向にあります。
また現代の技術では、生成AIは人の感情を読み取れません。
従って他人の悩みに共感し、問題を解決していくという姿勢は現状人だけが対応できます。
このように今後は人と生成AIがそれぞれの足りない部分を補い、ビジネスを発展させていくことが望まれるでしょう。
法整備と倫理的利用法の確立
今後、生成AIをビジネスシーンで活用していくためには、法整備や倫理的な利用方法の確立も求められます。
生成AIを運用していく上では、情報流出や著作権侵害、個人データの取扱いなど、さまざまなリスクを想定したルールが必要です。
このようなリスクに対して、アメリカやEUではAIを規制する法律が成立しています。
ヨーロッパの中には、生成AIの使用そのものを禁止している国もあるほどです。
一方、日本では2024年9月1日時点で生成AIについての法律は定められていません。
しかし2023年開催のG7広島サミットの結果を受けて、生成AIに関する国際的なルールを検討する「広島AIプロセス」が立ち上げられました。
そのため、今後は生成AIサービスが適切に運用されるためのルール作りが期待されます。
法整備と同時に、倫理的に生成AIを活用するためのガイドライン策定も求められるでしょう。
生成AIの概要やメリット・デメリットを把握して適切な運用につなげよう
生成AIとはジェネレーティブAI、生成系AIとも呼ばれているAIで、テキストや動画、音声などさまざまな独自コンテンツを短時間で生成可能です。
そのため生成AIを導入することで、業務の効率化やコスト削減、人員不足解消などのメリットが期待できます。
一方、誤情報を含むコンテンツの生成や著作権を侵害する恐れなどがデメリットとして挙げられます。
また生成AIを導入する上では、国産か外国産か、料金体系は自社に合っているか、スムーズに使えるかなどのポイントを押さえておきましょう。
TDSEではChatGPTをはじめとした、生成AIサービスにおけるLLMの活用支援を行っています。
マーケティングや人事、法務など業務別に適したソリューションを提案可能です。
生成AIを導入して業務の効率化、コスト削減などにつなげたいとお考えの方は、ぜひTDSEにご相談ください。
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