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- 投稿日
- 2024.12.23
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- 更新日
- 2024.12.23
総務や経理、労務などバックオフィスに該当する部門には、社内からの問い合わせが多く寄せられます。
従来は各々の部門に属する従業員が対面や電話、メールなどで対応していましたが、人手不足が社会問題化している今、より効率的な手段が求められています。
そのようなバックオフィス部門の問題を解決する手段として、近年注目を集めているのが社内向けチャットボットです。
本記事では、社内向けチャットボットの基礎知識や導入するメリット、運用のポイントなどを解説します。
目次
社内向けチャットボットとは?
社内向けチャットボットとは、社内からの問い合わせに対して自動で回答するツールです。
そもそもチャットボットとは、chat(会話)とrobot(ロボット)を組み合わせた造語で、ユーザーからの問いかけに対し、自動で回答してくれるプログラムのことを指します。
チャットボットが生まれた当初は簡単な対話を行うだけのシンプルなツールでしたが、時代やニーズの変化とともに機能が進化し、現代ではビジネスシーンでも広く活用されています。
社内向けチャットボットはその内の一つで、社内の人間から寄せられた質問や問い合わせについて、対話形式でやり取りしながら適切な回答を提示します。
FAQシステムとの違い
社内向けチャットボットとよく似たツールに、FAQシステムがあります。
FAQシステムとは、ユーザーからよく寄せられる質問と回答をデータベース化し、検索・閲覧できるシステムのことです。
質問に対して適切な答えを提示する点はチャットボットと同じです。
ただし、FAQシステムはユーザーがキーワード(例:交通費申請)を入力したり、任意のカテゴリ(例:申請カテゴリ)を選択したりすることで、自ら情報を探す仕様になっています。
またFAQシステムの場合、キーワードが適切であれば求める回答にすぐたどり着けますが、逆にキーワードが適切でなかった場合、求める回答を得られるまで何度も検索を繰り返さなければなりません。
一方、チャットボットは「交通費の申請の仕方を教えて」など口語体の質問を入力すれば、プログラムが内容を予測し適切な回答を提示してくれます。
質問が不明瞭だった場合でも、複数の選択肢を提示してくれたり、引き続き対話形式で質問を膨らませたりすることができるため、検索の手間を省けます。
また、FAQシステムを使いこなすにはある程度の検索スキルが求められますが、チャットボットなら対話するようにやり取りできるため、検索スキルに自信がない方でも使いやすいのが特徴です。
社外向けチャットボットとの違い
社外向けチャットボットとは、顧客や取引先など社外の人間に向けて設置されるチャットボットのことです。
社内向けチャットボットとの違いは大きく2つあります。
1つ目の違いは、学習しているデータの内容です。
社内向けチャットボットは従業員が利用するものなので、主に就業規則や就業マニュアル、自社の商品・サービスに関する専門的な知識などが集約されています。
一方、社外向けチャットボットは顧客や取引先をターゲットにしているため、自社商品の使い方やサービスの詳しい内容、トラブルシューティングなどが主な学習内容です。
2つ目の違いは設置場所です。
社内向けチャットボットは社内サーバーを構築して運用するか、あるいは外部サーバーにアクセスしてデータをやり取りするクラウドサービスを利用するのが一般的です。
一方、社外向けチャットボットはコーポレートサイトに設置されており、あらゆるユーザーが利用できる仕様になっています。
社内向けチャットボットが普及している背景
多くの企業が社内向けチャットボットの導入を進めている背景には、大きく分けて以下の3つの理由があります。
- 人手不足
- テレワークの普及
- チャットボットのAPI連携
人手不足
日本は少子高齢化の影響により、どの産業でも慢性的な人手不足に陥っています。
内閣府が公開している資料によると、生産活動を中心となって支える労働生産年齢人口(15~64歳人口)は、平成7年の8,716万人をピークに減少傾向です。
令和5年には総人口の6割弱となる7,395万人まで落ち込んでいます(※)。
労働生産年齢人口は今後も減少の一途をたどると予想されており、現在よりも深刻な人手不足が懸念されているのが実態です。
このように人材を確保するのが困難になりつつある昨今、人に代わってサポート業務をこなすチャットボットに注目が集まっています。
※参考:内閣府.「令和6年版 高齢社会白書 第1章 高齢化の状況」p2.https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2024/zenbun/pdf/1s1s_01.pdf ,(2024-10-30).
テレワークの普及
働き方改革や新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴い、ここ数年、多くの企業でテレワークの普及が進みました。
テレワークは交通費の削減やライフスタイルに合わせた多様な働き方、地方からの人材採用など複数のメリットがあるため、新型コロナウイルスが第5類(※)に移行した後も引き続き導入している企業も少なくありません。
その一方で、対面でのコミュニケーションが取りにくいことから、社内からの問い合わせが電話やメールに集中してしまうという新たな問題を生む原因となっています。
担当者一人で対応できる問い合わせ量には限度があるため、サポート業務を軽減するためにチャットボットの導入を検討する企業が増えているようです。
※参考:厚生労働省.「新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について」.https://www.mhlw.go.jp/stf/corona5rui.html ,(2024-10-30).
チャットボットのAPI連携
API(Application Programming Interface)連携とは、異なるソフトウェアやプログラムをつなぐ方法のことです。
API連携を利用すれば、チャットボットの機能を他のシステムやアプリ、例えばLINEなどのメッセージアプリに組み込むことが可能になります。
これまで、チャットボットを導入するには企業が一から開発する必要がありましたが、昨今のニーズの増加を鑑みた大手メッセージアプリ会社がチャットボット対応APIを公開したことにより、開発・導入のハードルが低下しました。
その結果、社内向けチャットボットの開発・運用に着手する企業が大幅に増加したという背景があります。
社内向けチャットボットを導入するメリット
社内向けチャットボットを導入すると、以下のようなメリットに期待ができます。
社内問い合わせ対応業務の負担減
社内向けチャットボットは、あらかじめ想定される質問と回答を学習させておけば、入力された質問に対して自動で適切な回答を提示できます。
チャットボットで必要な情報を得られれば、担当者に直接電話やメールで問い合わせなくても済むため、問い合わせ対応業務の負担が減少します。
特に年末調整や引っ越しなどで各種申請や手続きが増加する時期は、バックオフィス部門の業務負担が大幅に増加し、時間外労働が常態化することも少なくありません。
チャットボットを利用すれば、人手不足が顕著になる繁忙期でも業務をスムーズにこなせるようになり、残業の削減に役立つでしょう。
また、担当者にかかる負担は身体的なものだけにとどまりません。
同じ質問や問い合わせに繰り返し対応するのはストレスの原因になり、精神面にも大きな負担がかかります。
チャットボット導入によって問い合わせ業務を分散させれば、メンタル面での負担軽減にも期待できるでしょう。
コストの節約
社内向けチャットボットを導入すれば、基本的な問い合わせへの対応は全て自動化できます。
担当者が対応しなければならないのは、チャットボットで解決できなかった案件だけになるため、バックオフィス部門の人員を削減したり、時間外労働分の賃金を減らしたりする効果に期待ができます。
もし繁忙期にバックオフィス業務をアウトソーシングしていた場合は、外注費の削減にもつながるでしょう。
業務の属人化防止
組織内での知識・情報の共有化が不十分だと、特定の担当者しか業務に対応できない属人化が進みやすくなります。
属人化はサービス品質の低下や業務の停滞などを招く原因となるため、知識・情報を共有できる体制を整えなければなりません。
社内向けチャットボットを導入すれば、必要な知識・情報を迅速かつ手軽に入手できるため、属人化防止につながります。
いつでも好きなタイミングで問い合わせできる
バックオフィス部門が問い合わせに対応できるのは、営業時間内に限られます。
そのため、問い合わせが殺到していると当日中に回答をもらえない場合があります。
また、本社の業務時間外に発生した疑問・質問は翌日以降に繰り越されるケースも少なくありません。
その点、社内向けチャットボットは24時間365日いつでも利用できるため、いつでも好きなタイミングで質問が可能です。
電話の混雑によりつながらない心配もなく、質問・問い合わせをしたらリアルタイムで答えが返ってくるため、回答待ちによる業務停滞も防げます。
気軽に利用できる
電話やメールを使って担当者と直接コンタクトを取る方法は、質問する側にとっても心理的な負担が大きいです。
特に繁忙期はバックオフィス部門の負担が大きくなることを知っている分「今質問したら迷惑かも」「こんなことを聞いたら怒られるかな」などと不安を感じている従業員がいるかもしれません。
その点、社内向けチャットボットなら気遣いは不要です。
心理的なハードルが低くなり「分からないことがあったら、とりあえずチャットボットで質問してみよう」と気軽に使えます。
簡単に問い合わせが行えると、これまで分からないままで済ませていた疑問も解消でき、組織内での生産性向上にもつながるでしょう。
就業規則、マニュアルの精度向上
社内向けチャットボットには、問い合わせのあった日時や、担当者の名前、問い合わせ内容、回答内容などの履歴を残しておく機能があります。
これらの履歴を分析すれば、従業員が何に対して、どのような疑問を抱いているのか統計的に判別することが可能です。
例えば、社内システムの利用方法についての問い合わせが多い場合、システムのマニュアルに不備があることが予想されるため、マニュアルの見直しや改善が必要と判断できます。
このような分析と改善の取り組みを継続的に行うことで、全ての従業員にとって理解しやすい就業規則やマニュアルへと進化させられます。
社内向けチャットボット導入の流れ
社内向けチャットボットを導入する際の基本的な流れについて解説します。
1. チャットボットを設置するプラットフォームを決める
社内向けチャットボットは、従業員が普段から利用しているプラットフォームに設置する必要があります。
プラットフォームはWebサイト、チャットサービス、メッセージアプリなど複数あるため、現場で利用されているツールやサービスなどを考慮し、適切なものを選びましょう。
例えば、日頃から業務でビジネス向けチャットサービスを利用しているのなら、当該プラットフォームに設置することでチャットボットの利便性を向上できます。
2. 必要な機能をピックアップする
社内向けチャットボットは、ツールによって搭載されている機能に違いがあります。
例えばAI機能や外部システムとの連携機能、アンケート機能などです。
多機能なチャットボットを利用すれば、カバーできる業務範囲が拡大したり、より自然な質疑応答を行ったりできるようになりますが、その分コストやメンテナンスの負担が増加する可能性があります。
余計なコストや手間を削減するためにも、自社にどのような機能が必要なのか、事前にピックアップしておくことが大切です。
3. 担当者を決める
社内向けチャットボットの開発・導入・運用を行う担当者を決定します。
チャットボットの開発や導入は外部の業者にサポートを依頼することもできますが、現場への円滑な普及や、問題が発生した場合の対応を行うためには、社内にも専用の部署や担当者を置いておくのがおすすめです。
なお、チャットボットの導入や運用には相応の知識や経験が求められるため、社内で該当のスキルを有する人材をピックアップするか、あるいは必要に応じて適当な人材を確保しておきましょう。
4. 社内向けチャットボットを開発・選定する
必要な機能の洗い出しが終わったら、既存のチャットボットサービスを利用するか、あるいは自社でチャットボットの開発を行います。
既存のチャットボットサービスはあらかじめ必要な機能が搭載されているため、比較的楽に導入できることが特徴です。
ただし、カスタマイズの自由度はそれほど高くないため「欲しい機能がない」「細かい点で使い勝手が悪い」といった不満を抱く恐れがあります。
一方、自社でチャットボットを開発する場合はカスタマイズ性が高いため、より自社のニーズにぴったりのチャットボットを導入できます。
その分既存サービスを導入するより費用と時間はかさみますが、近年はノーコードでチャットボットを開発できる便利なツールもリリースされているため、自社で一から開発するよりコストや時間を削減できるでしょう。
5. 運用体制を整える
社内向けチャットボットは導入したら終わりではなく、現場で円滑に運用するための体制を整えなければなりません。
例えば、以下のような点はあらかじめ考えておく必要があります。
- チャットボットで適切な回答が提示されなかった場合はどうするか
- システム障害が発生した場合にどう対応するか
- 利用履歴をどういった方法で分析し改善に生かすか
運用体制が不十分なままチャットボットを導入すると、かえって現場に混乱を招いてしまう恐れがあるため注意しましょう。
6. シナリオの構築、FAQの作成
社内向けチャットボットを導入するには、用途や目的に応じて構築・作成したシナリオやFAQをチャットボットに落とし込む必要があります。
シナリオやFAQに不備があると、誤った回答をしたり、回答不能に陥ったりする原因となるため、十分なデータを用いて慎重にシナリオ・FAQの構築を進めましょう。
ただ、初期段階から完璧に仕上げるのは難しいため、ある程度の土台ができたらトレーニングやテスト運用を行い、課題や問題点を洗い出して改善していくのがおすすめです。
7. 運用開始・メンテナンス
トレーニングやテスト運用を実施後、実際に社内向けチャットボットを現場に導入します。
導入後はチャットボットの挙動や利用状況を監視し、課題や問題を発見したら担当者間で話し合い、適切な対策やメンテナンスを講じます。
ある程度の期間が経ったら、社内向けにチャットボット利用時のアンケートを配布し、内容を集計してフィードバックすることも大切です。
社内向けチャットボットを運用するコツ
社内向けチャットボットを本格的に導入する前に知っておきたい運用のコツを3つご紹介します。
導入目的を明確にする
社内向けチャットボットは、ツールの選び方や運用方法によって多種多様な用途・目的に活用できます。
しかし逆に言えば、導入目的が曖昧なまま現場に普及させても、思ったような効果を実感できない可能性があります。
目的がはっきりしないと開発やツールの選定に大きな支障をきたす原因にもなるため、社内向けチャットボットの導入を検討する際は、まず目的を明確にするところからスタートしましょう。
併せて「電話の問い合わせを3割減らす」「利用満足度70%を目指す」など具体的な目標を立てておくと、導入後の成果を可視化しやすくなります。
回答精度の向上に取り組む
どれだけ万全に準備したつもりでも、実際に現場に導入してみると「誤った回答を返された」「回答不能と表示された」といった問題が少なからず発生します。
これらの問題を解決するにはシナリオやFAQを見直し、回答精度の向上に努める必要があります。
そのためには、チャットボットの利用履歴を定期的にチェックし、問題や課題を洗い出して改善策を検討するというPDCAサイクルを回し続けなければなりません。
具体的には、サイクルをどのくらいの間隔で回すのか、利用履歴はどのように監視するのか、分析方法はどうするのかなど、PDCAサイクルをスムーズに回すためのルールを策定し、継続的に回答精度を向上できる体制を整えておきましょう。
従業員への周知を徹底する
社内向けチャットボットを設置したら、社内に向けてその旨をアナウンスしましょう。
周知が徹底されていないと、社内向けチャットボットを設置したにも関わらず、変わらずバックオフィス部門へ問い合わせが来る可能性があります。
実際、チャットボットを導入した企業の中には「せっかく設置したのにほとんど使ってもらえなかった」という失敗例も少なくないため、社内の目に付くところに告知を掲示したり、朝礼で伝えたりしてチャットボットの周知に努めましょう。
また、効果的な活用を促進するためには、説明会やセミナーの開催も有効です。
従業員にチャットボットの使用方法を具体的に学んでもらえば、導入効果をさらに引き出せるでしょう。
社内向けチャットボットを設置して業務効率化を進めよう
社内向けチャットボットを導入すると、社内からの問い合わせ対応業務の負担減や、業務の属人化防止、コストの削減など、さまざまなメリットがあります。
チャットボットに搭載される機能はツールによって異なるため、チャットボットを導入する目的やニーズに合ったものを開発・導入することが大切です。
より自社の業務や用途に適したチャットボットを導入したいのなら、既存のサービスではなく、ツールの自社開発に取り組んでみましょう。
自社開発というと多大なコストや期間が必要となるイメージがありますが、手軽に使える開発ツールを利用すれば短期間で使い勝手の良いチャットボットを開発することも可能です。
Difyは、誰でも簡単に生成AI搭載のチャットボットアプリを開発できる便利なツールです。
そのまま使えるテンプレートが豊富に用意されている他、用途や目的に応じて簡単にカスタマイズできるため、自社に適した生成AIチャットボットを作れます。
基本的な構築はノーコードで行われるため、プログラミングの知識がなくても安心です。
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