RAG

RAGとファインチューニングの違いは? それぞれのメリット・デメリットや活用例も解説

  • 投稿日
    2025.03.27
  • 更新日
    2025.03.27

企業が競争優位性を確立するためには、AIの活用が不可欠な要素となっています。

近年、RAG(検索拡張生成)やファインチューニングといったAI技術が登場し、企業はより高度な情報活用や業務最適化を実現できるようになりました。
しかし、これらの技術を最大限に活用するためには、それぞれの特徴や適切な使い分けを理解することが重要です。

本記事では、RAGとファインチューニングの基本的な違いから、それぞれのメリット・デメリット、効果的な活用方法、実装時の注意点までを詳しく解説します。

RAGとファインチューニングの基本

RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)とファインチューニングは、どちらもAIの能力を拡張するための重要な技術ですが、その仕組みと目的は異なります。

RAGとは

RAGは、AIがテキストを生成する際に、外部のデータベースや情報源を検索し、その結果を組み込むことで、より正確で信頼性の高い回答を可能にする技術です。
従来の生成AIとは異なり、新鮮な情報や専門的なデータに基づいて応答できるため、企業における社内ナレッジの共有や顧客対応の自動化などに活用できます。

RAGの大きな特徴は、セマンティック検索技術を利用できる点です。
これにより、単なるキーワード検索だけでなく、文脈や意味を理解した上で関連性の高い情報を抽出できます。

例えば、カスタマーサポートにRAGを導入した場合、AIは新しいFAQやマニュアルから情報を取得し、問い合わせに対して適切な回答を生成できます。

ファインチューニングとは

ファインチューニングは、学習済みのAIモデル(主に大規模言語モデル)を、特定の業務やタスクに特化させるために、追加のデータセットを用いて再学習させる技術です。
既存のモデルのパラメータを調整することで、特定の業界用語や企業文化に即した回答を得られます。

例えば一般的な言語モデルを基盤として、企業の過去の問い合わせデータをインプットすれば、その企業独自の専門用語やFAQに対応できるチャットボットを開発することが可能です。

ファインチューニングは、特定の用途に最適化されたAIモデルを比較的短期間で構築できる強力な手法であり、企業の業務効率化やサービス品質向上に役立ちます。

RAGとファインチューニングの違い

RAGもファインチューニングもAIを進化させる手法です。
しかし、それぞれまったく別の特徴を持ちます。
次の3つの観点から、違いを解説します。

  • データ活用方法の違い
  • カスタマイズ性の違い
  • データ漏洩リスクの違い

データ活用方法の違い

RAGとファインチューニングでは、AIモデルがどのようにデータを活用するかが異なります。

  • RAG:外部データベースと連携し、リアルタイムに情報を検索・活用
  • ファインチューニング:事前に用意した学習データを用いて、モデル自体を調整

RAGは、外部のデータベースや文献を検索し、その結果を基に回答を生成します。
このアプローチにより、常に新鮮な情報を参照できるため、リアルタイム性が求められる場面で有効です。

例えば、医療分野でRAGを活用する場合、新しい研究論文や公式データベースを参照することで、常に新しい医療情報に基づいた回答を提供できます。
ただし、参照するデータソースの信頼性が低い場合、誤った情報を提供するリスクがある点には注意が必要です。

一方、ファインチューニングは、特定のタスクやドメインに特化したデータセットを用いて、AIモデルを再学習させます。
そのため、特定分野への深い理解が求められる場面で高い効果を発揮します。

例えば、過去の診療記録や医学書を学習させ、特定の診療ガイドラインに準拠した回答を生成することが可能です。
しかし、情報の更新には再学習が必要となるため、頻繁な情報更新には適していません。

カスタマイズ性の違い

カスタマイズ性においても、RAGとファインチューニングには異なる特徴があります。

  • RAG:外部データソースの変更や検索クエリの調整により、柔軟にAIの回答を調整できる
  • ファインチューニング:モデル自体の再学習が必要となるため、より深いレベルでのカスタマイズが可能だが、時間とコストがかかる

RAGは、外部データソースを切り替えることで異なる分野の知識を容易に反映できます。
また、検索クエリを調整すれば、回答の粒度や焦点を変更することも可能です。
しかし、AIモデル自体の振る舞いを根本的に変えるほどの変化は期待できません。

ファインチューニングは、AIモデルの内部構造を調整するため、特定の業界や企業のニーズに合わせた、より高度なカスタマイズが可能です。
特定の用語や文脈に沿った高精度な回答を実現できますが、データ準備や再学習には相応の時間とコストがかかります。

データ漏洩リスクの違い

データセキュリティの観点からも、RAGとファインチューニングには異なるリスクが存在します。

  • RAG:外部データソースとの連携時に機密情報が漏洩するリスクがある
  • ファインチューニング:学習データに含まれる機密情報が意図せず回答として生成されるリスクがある

RAGでは、信頼性の低いデータソースと接続した場合、不適切な情報が混入する可能性があります。
また、検索クエリを外部に送信する際に、ユーザーの入力情報が第三者に漏洩するリスクも考慮しなければなりません。

ファインチューニングでは、学習データに個人情報や社内機密が含まれている場合、それらの情報が回答として出力される可能性があります。
そのため、学習データの選定やフィルタリングには細心の注意が必要です。

RAGのメリット・デメリット

RAGの特徴から、活用のメリット・デメリットを解説していきます。

メリット

RAGの主なメリットは、新しい情報への対応力、高精度な回答生成、そして柔軟な情報抽出の3点です。

RAGは外部データベースをリアルタイムに参照するため、常に新鮮な情報に基づいた回答を提供できます。
従来のLLMでは、学習データが古く現状の変化に対応しにくいという課題がありました。
しかし、RAGは外部データベースと連携することで、この問題を解決します。

例えば、直近のニュース記事や論文、企業の製品データベースなどを参照することで、常に鮮度の高い情報を提供できます。
また、幅広い情報源から関連情報を収集し、それらを統合して回答を生成するため、従来のLLM単体よりも正確で信頼性の高い回答が可能です。

さらに、ユーザーの質問の意図を理解し、関連性の高い情報を抽出できるため、質問応答システムや情報検索システムとしての活用に適しています。

デメリット

RAGには、実装の複雑性、処理速度、そしてデータの信頼性への依存というデメリットも存在します。

RAGは大規模なデータベースとの連携や、適切な検索アルゴリズムの設計が必要となるため、実装には高度な技術力が必要です。
特に、検索対象のデータが整理されていない場合や、信頼性の低い情報源を参照してしまうと、回答の精度が低下する可能性があります。

また、外部データの検索と生成処理を組み合わせるため、従来のLLMと比較して応答速度が遅くなりがちです。

加えて、参照する外部データの品質が低い場合、誤った情報や偏った情報を含む回答を生成してしまう可能性があります。
そのため、信頼できる情報源の選定と、データの品質管理が重要です。

ファインチューニングのメリット・デメリット

ここでは、ファインチューニングの活用によって期待できるメリットと、考慮すべきデメリットについて解説します。

メリット

ファインチューニングの主なメリットは、高精度な出力の実現、コスト削減、そして応答速度の向上です。

ファインチューニングは、既存のLLMを特定のタスクやドメインに特化させることで、その分野における高い精度の出力を実現します。
一般的なLLMでは対応が難しい専門用語や業界特有の言い回しにも、適切に対応できるようになります。

例えば、企業が過去の問い合わせデータや学術論文を用いてファインチューニングを行えば、その企業や業界特有の知識を備えたAIを構築でき、顧客対応の精度を向上させることが可能です。

また、ファインチューニングされたモデルは、必要な知識を内部に保持しているため、RAGのように毎回外部データベースを検索する必要がありません。
結果的に応答速度が向上し、ランニングコストの削減にもつながります。

デメリット

ファインチューニングの主なデメリットは、データの偏りとコストの高さです。

ファインチューニングに用いる学習データが偏っている場合、AIモデルの出力も偏ったものになる可能性があります。
例えば、特定の人種や性別に関するデータが偏っていると、顔認識AIの認識精度に偏りが生じるリスクがあります。
そのため、学習データの多様性と公平性を確保することが重要です。

また、ファインチューニングには、大量の学習データと計算リソースが必要となり、初期コストが高くなる傾向があります。
さらに、モデルを更新するたびに再学習が必要となるため、継続的なコストも発生します。

RAGとファインチューニングの実装方法

RAGとファインチューニングでは、AIモデルを構築・最適化するプロセスが異なります。
ここでは、それぞれの実装方法を具体的に解説します。

RAGの実装方法

RAGの実装は、以下のステップで進められます。

  1. 情報源の準備
  2. データベースの構築
  3. 検索システムの構築
  4. 生成システムの構築
  5. システムの統合
  6. テストと改善

RAGは検索結果を基に回答を生成するため、使用するデータベースの品質が最終的な回答の精度を決定します。

信頼できる情報源(政府機関、公的研究機関)のデータや、正確な社内文書、マニュアル、FAQなどの文書を使用することが重要です。

ファインチューニングの実装方法

ファインチューニングは、以下のステップで進められます。

  1. 質の高い学習データの準備
  2. 事前学習済みモデルの選定
  3. 学習アルゴリズムの設定
  4. ファインチューニングの実行
  5. モデルの評価とテスト

ファインチューニングはコストが高いため、事前準備が非常に重要です。
自社にてLLMを選び、目的に沿ったデータを収集・整理しましょう。

RAGとファインチューニングの活用例

RAGとファインチューニングは、それぞれ得意とする領域が異なります。
ここでは、具体的な活用例を挙げながら、それぞれの技術がどのようなケースで効果を発揮するかを解説します。

RAGが効果的なケース

RAGは、外部の知識ベースやデータベースを活用し、常に新しい情報を参照できる点が特徴です。
頻繁なモデル更新が難しい状況や、情報の鮮度が重視される業務に向いています。

RAGは新しいデータを検索して回答を生成するため、回答に含まれる情報の鮮度を維持しやすいです。
また、意味を考慮した検索により関連性の高い情報にアクセスしやすく、LLMのハルシネーション(事実に基づかない情報の生成)を軽減することも可能です。

具体的な活用例として、社内規定や業務マニュアルに関する問い合わせに対応する社内チャットボットがあります。
従業員は常に新しい情報に基づいて業務を遂行することが可能です。

他にも、カスタマーサポートでは、新規製品の情報やFAQを参照して、正確かつ迅速な回答を提供できます。
さらに、文書検索・要約にも生かせます。

ファインチューニングが効果的なケース

ファインチューニングは、特定の専門分野や業務において、高度な専門知識と高精度な処理が求められる場合に有効です。
特に、特定のドメイン知識が必要な業務や、個々のユーザーに最適化されたサービスを提供する際に、その効果を発揮します。

ファインチューニングの強みは、一般的なAIモデルと比較して、特定のドメイン知識をより正確に反映できる点です。
企業の独自データを学習させることで、業務に特化した応答を実現できます。
さらに、レコメンデーションシステムに応用すれば、ユーザーごとに適切なコンテンツや商品を提案することも可能です。

具体的な活用例としては、特定の話者や感情表現に特化した音声合成モデルの作成が挙げられます。
その他にも、企業の商品やサービスの特徴を捉えた商品説明文の自動生成、特定の業界や企業に特化したチャットボット開発、特定のフォーマットやスタイルに沿った文書(契約書、レポートなど)の自動生成、特定の画風やテーマに基づいた画像生成などがあります。

目的に応じてRAGとファインチューニングを使い分けよう

業務の特性や目的に応じて、RAGとファインチューニングを適切に使い分けることが重要です。
それぞれの特徴を踏まえ、どちらの技術がより効果的かを判断しましょう。

RAGは新鮮な情報の反映や外部データの活用が重要な場面に向いており、ファインチューニングは特定分野での深い専門性が求められる場面に向いています。

ただし、どちらの技術も、実装には専門的な知識や技術が必要です。
そのため、社内にエンジニアがいない企業や、初めてAIエージェントを導入する企業にとっては、実装のハードルが高いでしょう。

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