生成AI

生成AIを企業が活用する際のリスクとは? 実際の事例や対応策を解説

  • 投稿日
    2025.03.27
  • 更新日
    2025.03.27

生成AIは、テキストや画像などを自動で生成できる革新的な技術として、ビジネスシーンでの活用が急速に広がっています。
しかし、生成AIにはさまざまなリスクが潜んでいることも忘れてはなりません。

情報漏えいや著作権侵害、誤情報の拡散など、企業や社会に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、生成AIを導入・活用する際には慎重な検討が必要です。

本記事では、企業が生成AIを活用する際に直面する可能性のあるリスクとその対策について、具体的な事例を交えながら解説します。

生成AIで懸念されるリスクとは?

生成AI(Generative AI)は、学習データに基づいてテキストや画像などのコンテンツを生成する技術です。
その進化は目覚ましく、ビジネスシーンでも活用が広がっています。

精度の高いコンテンツを容易に生成できることから注目を集める一方で、いくつかのリスクも懸念されています。
具体的には、法的リスクやセキュリティリスク、社会的なリスクなどです。

生成AIは業務効率化に貢献するツールですが、その利用には慎重な検討が必要です。
以下、それぞれの種類のリスクについて詳しく見ていきましょう。

生成AIを活用する際の法的なリスク

生成AIの活用において、特に注目されているのが法的なリスクです。
法的なリスクへの対策を怠ると、第三者から訴えられて訴訟や損害賠償請求に発展するケースがあるため注意しましょう。

具体的には、以下2つの法的なリスクが挙げられます。

  • 知的財産権を侵害するリスク
  • プライバシーを侵害するリスク

それぞれの点について説明します。

知的財産権を侵害するリスク

生成AIが学習するデータには、イラストや楽曲など、他者の著作物が含まれる場合があります。
生成AIが作成したコンテンツがこれらの著作物と類似している場合、著作権侵害となる可能性があるため注意が必要です。

知的財産権には、著作権の他に著作者人格権、商標権、意匠権なども含まれます。
現行法では、他者の著作物を生成AIの学習に利用すること自体は知的財産権侵害には該当しません。

しかし、他者の著作物に酷似したコンテンツをWeb上で公開したり、商業利用したりすると、損害賠償請求や刑事罰の対象となる可能性があります。

従って、生成AIが生成したコンテンツを公開・商用利用する際には、知的財産権を侵害していないか、事前の確認が不可欠です。

プライバシーを侵害するリスク

生成AIは膨大なデータを学習しますが、その中に個人情報が含まれている可能性があります。
生成AIの利用によって個人情報が漏えいした場合に問題となるのがプライバシー侵害です。

例えば、企業が顧客ニーズの分析に生成AIを活用する際、個人情報を取り扱うこともあります。
生成AIの学習に個人情報を用いる場合は、事前に顧客の同意を得る必要があります。
情報収集自体に抵抗を感じる顧客もいるため、慎重な対応が求められるでしょう。

また、海外ではディープフェイク技術を用いた顔写真の悪用事例も報告されています。
技術的な対策だけでなく、企業におけるプライバシー保護の意識向上が不可欠です。

生成AIを活用する際のセキュリティ面のリスク

生成AIは誰でも気軽に利用できる反面、そのセキュリティ性が問題視されるケースも増えています。
生成AIの活用で想定される以下3点のセキュリティリスクについて、押さえておきましょう。

  • 機密データ漏えいのリスク
  • サイバー攻撃によるリスク
  • プロンプトインジェクションのリスク

機密データ漏えいのリスク

生成AIの活用において、個人情報を含む機密データを取り扱う機会は少なくありません。
セキュリティ対策が不十分な場合、不正アクセスや情報漏えいによって機密データが悪用されるリスクがあります。

ユーザーが生成AIに入力したプロンプトも含めて、あらゆるデータが生成AIの学習対象です。
そして、学習データは他のユーザーが利用した際に出力される可能性があり、実際にオープンソースのAIに機密情報を入力した結果、情報が漏えいした事例も報告されています。

機密データの漏えいは、企業の社会的信頼を失墜させるだけでなく、個人情報保護法に違反した場合、罰金や損害賠償の支払いが発生し、財政的な打撃を受ける可能性もあります。

サイバー攻撃によるリスク

生成AIは利便性の高い技術として多様な分野で普及していますが、セキュリティの脆弱性からサイバー攻撃によるリスクが懸念される状況です。
生成AIの管理やセキュリティ対策が不十分な場合、サイバー攻撃のターゲットとなるでしょう。

例えば、生成AIが不正アクセスを受けたことで誤ったデータが入力されると、不適切な情報が生成される可能性があります。
企業の生成AIが狙われた場合、意思決定に重大な影響を及ぼすかもしれません。

このように、個人だけでなく企業や組織の生成AIをターゲットとしたサイバー攻撃によるリスクが考えられます。
そのため、セキュリティの脆弱性を放置せず、生成AIの更新・保守を徹底することが重要です。

プロンプトインジェクションのリスク

生成AIには、悪意のあるプロンプト入力によって、不正アクセスや機密情報漏えいにつながる「プロンプトインジェクション」のリスクが存在します。
プロンプトインジェクションとは、生成AIの誤作動を誘発するプロンプトを入力し、提供側が禁止している情報を生成させるサイバー攻撃の一種です。

この攻撃手法により、攻撃者はシステムの制御を奪い、機密情報の窃取や不正操作が可能になります。
生成AIを意思決定システムとして活用する場合、信頼性を著しく損なうため注意が必要です。

プロンプトインジェクションを回避するには、不審な挙動を監視するシステムの導入や、ログの分析が不可欠です。
また、IDやパスワードの管理も徹底しましょう。

生成AIを活用する際の社会的なリスク

生成AIの活用によって被害の対象となるのは、企業だけではありません。
社会全体に悪影響が及ぶ可能性があります。

自社に生成AIを導入する前に、社会的なリスクについても把握しておきましょう。

  • 誤情報が拡散されるリスク
  • 差別や偏見を助長するリスク

それぞれの点について説明します。

誤情報が拡散されるリスク

生成AIの精度は向上していますが、出力される情報が常に正しいとは限りません。
不完全なデータの学習や内容の偏りにより、生成されたコンテンツに誤りが含まれるハルシネーションを起こす可能性があります。

ハルシネーションとは、生成AIが事実とは異なる情報を、事実であるかのように生成してしまう現象です。
誤情報を含むコンテンツが公開・拡散されると、社会に混乱を招く恐れがあります。

企業が生成AIによるコンテンツを検証せずに公開した場合、財産的な損失だけでなく、信頼を失墜する可能性もあります。
出力されたコンテンツは適切にフィルタリング・検証し、誤情報の拡散を防ぐことが重要です。

差別や偏見を助長するリスク

生成AIが出力するコンテンツは、学習データに大きく影響されます。
そのため、誤ったデータや偏りのあるデータを学習した場合、差別や偏見を助長するコンテンツが生成されるリスクがあります。

このような問題は「偏見の再現」と「偏見の拡大」の2種類に分類できます。
偏見の再現とは、リソースや機会を公平に配分しないことです。
一方、偏見の拡大とは偏見のステレオタイプを強化することを指します。

これらの問題に対処するには、生成AIに学習させるデータの内容に注意する必要があります。
具体的には、学習データの偏りをなくし、内容のバランスを考慮することが重要です。
生成されたコンテンツを定期的に検証し、バイアスの有無を確認しましょう。

生成AIのリスクに関する事例

ビジネスシーンでも生成AIが普及したことで、従来とは異なる形で情報漏えいや訴訟などが起きています。
ここでは、実際に起きた事例をいくつか紹介します。

  • 社内ソースコードの外部流出
  • バグ発生による個人情報の漏えい
  • アカウントの非合法的な取引
  • ディープフェイクによる詐欺被害
  • 米新聞社による訴訟

社内ソースコードの外部流出

韓国の電子部品メーカーで、従業員が誤って生成AIに機密情報を含むデータをアップロードした事例が発生しました。
これにより、社内機密であるソースコードが生成AIを経由して外部に流出したされています。

結果として、このメーカーでは従業員による生成AI搭載チャットボットの使用を禁止するポリシーが策定されました。
生成AIは業務効率化に貢献しますが、誤った使用は情報漏えいのリスクを高めます。
そのため、企業は生成AIを適切に利用するための社内ガイドラインを整備する必要があるでしょう。

バグ発生による個人情報の漏えい

世界的に利用されている生成AIの運営企業で、ユーザーの個人情報が外部に漏えいした事例がありました。
一部のユーザーの個人情報が、他のユーザーに閲覧可能な状態になっていたことが確認されています。

情報漏えいの原因は、サービス内でバグが生じたことにありました。
運営企業は直ちにサービスを停止させ、バグを修正しています。

この事例は、生成AIの利用にはセキュリティリスクが存在することを示しています。
企業が生成AIを活用する際は、利用に関する社内規定を整備し、情報漏えい対策を徹底することが重要です。

アカウントの非合法な取引

2023年、10万件を超える生成AIのアカウント情報が、闇市場で取引されていることが明らかになりました。
シンガポールのセキュリティ企業が、パスワードやユーザーIDが不正に取得され、売買されていたことを公表しています。

悪意のある者がアカウント情報を不正に入手することで、個人情報や機密情報などが盗み出される可能性があります。
セキュリティ企業が公表した情報からは、アカウント情報が悪用されたかどうかは判明していません。

ディープフェイクによる詐欺被害

2024年、香港でディープフェイクによる詐欺被害が発生しました。
多国籍企業の財務担当者が、AIで生成された上司の姿を映したビデオ会議にだまされ、約38億円の資金を不正に送信してしまいました。

犯人は、企業の公式サイトに公開されていたCEOの動画を基に、本人そっくりの映像や音声を再現したとされています。
ディープフェイクは注目されている技術ですが、画像や動画の合成にとどまらず、社会的に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

企業はセキュリティ対策を講じるとともに、従業員へのリテラシー教育も実施することが重要です。

米新聞社による訴訟

アメリカの大手新聞社が、ある企業が自社の記事を無断で使用し生成AIに学習させたとして、著作権侵害の訴訟を起こしました。
記事が生成AIの学習に使用されたことで、自社の収益が損なわれたと、大手新聞社は主張しています。

一方、訴訟を起こされた企業側は、新聞社が生成AIを意図的に使用して、自社のコンテンツを盗用したかのように見せかけていると反論しています。
この事例は、AIに学習させるデータとして他者の著作物を使用することに対する議論を巻き起こしました。

訴訟の結果は、今後のAI開発や著作権法に大きな影響を与える可能性があります。

生成AIのリスクを解消するための対応策

ここまでに説明したように、企業が生成AIを活用するに当たっては、さまざまなリスクが考えられます。
そのため、リスクを解消するための対応策についても把握することが重要です。

ここでは、生成AIを使用するリスクを抑えるための次の対策を解説します。

  • 生成AIの活用範囲を設定する
  • 自社に適したAIツールを選定・導入する
  • データマネジメントでリスクを最小化する
  • 従業員向けのガイドラインを策定する
  • 従業員の教育を実施する
  • 生成AIの活用方法を定期的に見直す

生成AIの活用範囲を設定する

企業が生成AIを導入する際は、あらかじめ活用範囲を明確に設定しましょう。
生成AIは万能な技術ではなく、得意・不得意な分野や業務が存在します。
生成AIのリスクを抑えながら、その効果を最大限に発揮させるには、適切な利用範囲を定めることが大切です。

利用範囲を設定するに当たっては、過去に発生した情報漏洩の事例を参考にすると良いでしょう。
自社での活用に置き換えて考えることで、具体的なリスクを予測しやすくなります。
実際に導入する前にリスク評価を行い、適切な範囲で生成AIを活用することが重要です。

自社に適したAIツールを選定・導入する

生成AIを導入する際は、自社の状況や目的に合ったAIツールを選定することが大切です。
AIツールの選定に当たっては、機能や性能だけでなく、プライバシー保護やセキュリティ対策が充実しているかも確認しましょう。

従業員が入力したデータを、生成AIの学習データから除外する「オプトアウト」を選択することも有効です。
これにより、社内での情報漏えいリスクを最小限に抑えられます。

データマネジメントでリスクを最小化する

生成AIの性能は、学習に使用されるデータの質に左右されます。
そのため、AIに学習させるデータの正確性や公平性、機密性を保つことが重要です。

データの質が低いと、AIが誤った情報や偏った情報を生成してしまう可能性があります。
機密情報を含むデータをAIに学習させると、情報漏えいのリスクが高まるため注意が必要です。

生成AIを効果的に活用するには、データの品質管理やプライバシー保護、ガイドラインの策定を徹底しましょう。

従業員向けのガイドラインを策定する

生成AIを適切に活用するためには、企業が従業員向けに明確なルールを策定することが重要です。
具体的には、AIの利用目的や範囲、取り扱うデータの種類、機密情報保護のためのルールなどを定めたガイドラインやマニュアルを作成します。

作成したガイドラインやマニュアルは、全従業員に周知・徹底させる必要があります。
情報処理推進機構(IPA)などが公開しているガイドラインを参考に、自社の状況に合わせてルールを作成することも効果的です(※)。

ガイドラインを通じて、従業員が生成AIを正しく理解し、利用できる環境を整備しましょう。

※参考:独立行政法人 情報処理推進機構.「テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン」.https://www.ipa.go.jp/jinzai/ics/core_human_resource/final_project/2024/generative-ai-guideline.html ,(参照2025-02-18).

従業員の教育を実施する

企業が生成AIを導入する際には、従業員のAIリテラシー向上も不可欠です。
従業員向けにAIの基礎知識や具体的な使い方、セキュリティに関する注意点などを盛り込んだ研修プログラムを実施しましょう。

研修ではAIのメリットだけでなく、誤った使い方によるリスクについても具体的に説明してください。
その上で、従業員が責任を持ってAIを利用できるよう、意識改革を促すことが重要です。

定期的な情報共有に加えて、最新情報への更新も欠かせません。
各従業員が知識を常に最新の状態に保つことで、AIをより効果的に活用することができます。

生成AIの活用方法を定期的に見直す

生成AIは日々進化しており、新たな機能やサービスが登場しています。
一方、新たなセキュリティリスクが発生する可能性もあるため、企業は生成AIの活用状況を定期的に見直す必要があります。

国内外の生成AIに関する動向を常に把握し、自社の利用状況を定期的に見直しましょう。
これにより、新たな脅威に迅速に対応できます。

生成AIの導入はゴールではなく、目標を達成するための手段として活用することが重要です。
企業には、技術の進化に合わせて生成AIの活用方法を見直し、改善していく姿勢が求められます。

生成AIが抱えるリスクを理解して、効果的に活用しよう

生成AIは多岐にわたる分野で用いられ、現代において企業が事業を継続する上で、不可欠な技術となっています。
利便性の面が注目されていますが、生成AIには対応しなければならないリスクも存在します。
そのため、企業が生成AIを導入する際は、あらゆるリスクを想定して多角的に対策を行うことが重要です。

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